こんなことがあった、小学生の頃 掃除の時間だ。家庭科室のそうじが担当だった。
要約するとこんな感じだ。
小学生の掃除時間なわけだ、特に男子にとっては場所から動いてはいけないとはいえ、休み時間の延長のようなものだ。その日も友人Sとサボりながら話をしていた。
「友よ、あれをどう思う?」
「フム、何かねマイン・フロイント」
友人Sの指差す先にあったものはガス警報器であった。
「君はあれがオナラで鳴ると思うかね?」
「あれがか?いや、まさかそんなことはないんじゃないか」
「しかし人間の屁も燃えるというぞ、鳴っても不思議ではないだろう。」
「だが、そこまで精密に作ってはいないだろう。コンロから漏れてるのがわかればいいんだからな。」
無論、これらの会話は富山弁丸出しで、しかも小学生が語っているのであるから、こんな綺麗?には喋っていない。あくまで訳してある。
「しかし、それでは警報器の意味がないだろう、危険なことに気付かないと仕方ないぞ。」
「それはわかるさ、でもそんなに屁が危険か?馬鹿なこと言ってるんじゃあないよ。フロイント」
「なに!馬鹿とはなんだ友よ、聞き捨てならんぞ!燃えるものに反応せずに何のための警報器か!それともお前はこの器械の作り方を知っているとでもいうのか、見たことでもあるのか、昭和何十何年何月何日何曜日何時何分に見たのだ!」
「何をフロイント!お前こそ本当に屁が燃えるのをみたことでもあるのか!そう言われてるだけじゃないか!昭和何十何年何月何日何曜日何時何分に見た!」
なんということだろう、警報器が屁に反応するか、こんな馬鹿な話が今、この二人の友情を引き裂こうとしていた。口げんかは止まるところを知らず、意味不明にエスカレートしていく、そろそろどちらかが手を出さんとする直前、友人Sのこの言葉が二人の口論ピタリと止めた。
「よし、証拠をみせてやろう!!」
何!?証拠?ガス警報器が屁でなる証拠、つまりはその器械に向けて彼が・・・
この言葉を聞いた次の瞬間、鳴るわけがないと考えていた自分も、期待した。ワクワクしていた。
鳴れば、そう鳴れば面白い。素晴らしい実験だ、論より証拠、これに勝るものはない
彼は器用に警報器に近づけると・・・・
発射した。
・ ・・・・・・・・・・・・・・
およそ品性とは無縁な音の後、静寂が我々をつつむ。
鳴らないのだ、そう、やはり鳴らなかったか・・・
ピーッピーッピーッピーッ
現実に起こると絶望感のある、それは音であった。
そう、鳴らないのはほんの数瞬だった、彼のそれが器械にしみわたるまで、ほんの少しの時間が必要だったのだ。
いや、器械の性能はもういい、わかった、いやわからない、かえってわからないことが増えた。どうするのだ?どうすればこの不快な音は止まってくれるのだろう。彼はもう何もしていないというのに。
なすべきことなくただ立ちすくんでいる我々の元に、それまで遠くにいた女子達が駆けつけてきた。
「どうしたの?」
「え・・・いや」
流石の彼も、女子の前で「オナラで鳴らした」とはいえなかった。
音は未だ止まるところを知らない、そうしているうちに女子達が、聞きたくない一言を口にした。曰く
「先生呼んでくる」
言うが早いか全員がその場を走り去る。そう、我々はこれを最も恐れていた。
先生に叱られる。
大人にとっては笑い話だろう、だが当時の我々にはとても笑える状況ではなかった。そう、最も望んでいたはずの結果は、最悪の事態と直結していたのだ。
不意に、彼は行動に出た、何を思ったか警報器を思い切り蹴っているではないか。
「やめろ、何してるフロイント」
「止めるな、壊せば止まるはずだ」
彼はもう錯乱に近い。なぜ壊れたか、先生に聞かれた後、「僕のオナラで止まらんようになったからです」と、そのほうが最悪ではないか。
再び立ち尽くす我ら2人、その時、口論に加わらず成り行きを見ていたI君が一言叫んだ
「これだ!」
彼の手にはコンセントが握られていた。そう、テーブルの死角になっていて気付かなかったがコンセントがあった。我ら二人も飛びついた、一人で充分なのに・・・
安堵の静寂が我々をつつんでいた。時間にしておそらくは2分程度のことだったであろうが、あの永遠に続くかと思われた不快な音はもう聞こえない。コンセントを再び差し込んでも心地よい静寂はなお続いたのだ。もっともコンセントを差し込む前に件の警報器を必死でフーフーしていたS君は理科の実験でも見せたことのない真剣な表情をしていたが。
少し遅れて女子たちが先生を連れてきた、だが我々の口から出た言葉は「さあ」「知らん」
この2言が9割を占めた。知らぬ、存ぜぬを貫き通したのだ。事態は収束を向かえた。
次の日の帰り、ホームルーム、いや、小学校では帰りの会と呼んでいたその時間。先生が言った。
「面白い日記があったので発表します。」
I君の日記だった
「今日、掃除の時間にS君がー・・・・・
すべてバレてしまいました。
なぜこれが音楽のカテゴリーにはいっているか?
それはオーケストラ仲間とこんな馬鹿話をよくしていたからだ。覚えている友人も多いと思われる。これを話すのが年間行事にさえなっていたのが懐かしいですね、蓮見君。
さて、射水市の歯科医院のホームページ そのブログのはずが、歯医者らしい話が出てこない。
これではいけません。
今日は午後が休診なので2本ダテにしましょうか。
このままだと少々イタいので。
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