太極拳なんてものをやってると必ず体験する。
口では説明できないような「技」を、
コレを体験しない人はしっかりした太極拳をやっていない人だ。
例えば、兄弟子達は大先生に指二本でヒョーイと倒されてしまったり・・・
「押してみなさい」
と言われて押してみる、するとなんてことか・・・
兄弟子は押せたのだ、あの陳小旺老師を押したのだ・・・
「押せてる、俺はあの小旺先生を押しているんだ!」
間違いなくそう思ったと言う。もう天下は俺のものって思ったことだろうな。
しかし、気づいたときには何故か上にあるはずの天井が横にあり・・・
彼は倒れてしまったと言う。
とかく達人のやることはどうにも表現に困るのだ。
かくいう私もそーゆー「不思議な体験」を味わっている。
その例をひとつ・・・交手という、取っ組み合いの稽古
「ゾウヨウファン」という技を教わった時のことだ。
ファンってどんな字か忘れてしまったが「ゾウヨウ」は「左右」
相手の両脇を筈・・・要するに手のひらで抱え込み
左、右と車のハンドルを廻すように揺らして崩れたところで押して倒す技だ。
我々が一生懸命に「左右」に相手をひねるが、なかなか崩れるものではない。
及川重道先生が皆に言う
「こうだよ、見て」
技をかけられるのは私、しかしどういう技かはもう知っている。
やられるものかと踏ん張ってみるが・・・
先生が「左右」にちょっと揺らしただけで、体の軸が真直ぐに保てずグラグラと崩され倒されてしまった。
太極拳は「立身中正」といい、体を常に真直ぐに保つことを事のほか大事にする。
体をくねらせる酔拳とは逆だ。その「立身中正」が保てない
・ ・・ハッそうか、相手の力を受け流さなくてはいけないのを忘れていた。
太極拳の真髄は相手の力を無力化することにあるのだ。
もう一回・・・一寸リラックスして・・・心の中で「さあ、来い!」
先生「いくよ!」
・ ・・浅知恵でした。
もっと酷いことになってバッタリと倒されてる私がいた。
なんであんなことになるのか・・・なんだか先生の剄(力)が私の体内にまで侵入してきてるようなそんな・・・自分の意思とは無関係に背骨が曲げられている感覚だった。
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